吸い物の決め手
料理店で味わう吸い物は一番だしを贅沢に使っているので家庭で作るそれとは風味が違います。そのうえキレがあり香りも引きたっています。一方家庭で作る吸い物は風味において劣り、味も少々ぼやけ気味になります。一般にはダシの素を使うというご家庭がほとんどではないでしょうか。
しかし、ダシの素を使っていても美味しい吸い物は作れます。ポイントはダシの素を入れるタイミングです。根菜類など火の入りにくい素材が具の場合、水から一緒に入れてダシをしみ込ませるという考え方がありますが、もともと椀だねは下煮しておくのが基本で季節の旨み香りを吸い地と共に頂くという考え方です。
吸い地が重たくならないように先に根菜類などに火を通しておいて、仕上がり直前にダシの素、塩、薄口醤油等で味を整える方が風味が生きた美味しい吸い物になります。また、具材に魚介類を持ってくる時は先の調味料を入れた後仕上げに日本酒を振って仕上げます。この時の白身魚等はあらかじめ1時間くらい前に塩を当てて余分な水分を除き霜降りしておく下処理も必要です。
白身魚の吸い物
真鯛やスズキなどの白身魚は味は淡白ではすが上品な旨みがあって吸い物の椀だねに良く使われます。前述したとおり、塩を当てて霜降りする下処理をしないと生臭みが残るので気をつけたいところです。それでも生臭いというお方にも受けいれられるように仕上げに酒を少々落として生臭みを取ると同時に風味を良くする工夫をします。ここで使う酒は燗冷ましや煮切り酒ではなく清酒を使いますので念のため。
汁ものは何でもそうですが、沸騰直前の状態を維持しながら味を整えていくことが大切です。沸騰すると風味も味も壊れて平らな汁ものになってしまうので注意が必要です。
青魚の汁もの
青魚の汁ものと言えばつみれ汁が経済的で美味しいです。イワシのつみれ汁は代表格ですが、大衆魚でありながら刺身、酢のもの、煮付け、塩焼きなど応用範囲が広い魚です。
イワシのつみれ汁はイワシのすり身を団子にした「つみれ」を椀だねにした汁ものです。イワシをまな板上で叩いても良いのですが口当たりの良さを求めるならすり鉢でするのがベストです。そしてすり身を団子にする時のつなぎを小麦粉や片栗粉でするご家庭がほとんどだと思いますが、風味が良いとまでは言えません。では何をつなぎに使うのが良いのでしょうか。、それは山芋をすりおろしたものを使うと格段に風味が良くなります。すり身とすり下ろした山芋をすり鉢ですり合わせて出来上がったつみれはふっくらして食感が抜群です。
寒い冬には粕汁が欲しくなります
粕汁と言えば鮭かブリがピッタリです。寒い冬にはなくてはならない汁ものの一つです。脂の乗った鮭、ブリは酒粕ととても相性がいいです。こたつでテーブルを囲んで、あるいは外でストーブを囲んでフーフー言いながらすする粕汁は最高のご馳走です。
野菜は大根、御坊、ジャガイモ、人参、揚げ、カブ、こんにゃくなどの根菜類をメインにして具沢山で頂くと栄養満点で身体も温まります。ブリは脂も乗っている時期でこってりとしていて粕汁に負けません。鮭は生より塩干で売れている甘口(最近は減塩志向でほとんどが甘口です)のものを使う方が合います。塩干物を切り身にすると切れ端がでるのでそれを使うと安上がりで便利です。
味噌と酒粕を使う
粕汁は酒粕と味噌の両方を使うのですが、最初に薄めの味噌汁仕立てにしておいてから仕上げに酒粕で味を整えるとコクのある美味しい粕汁ができます。仕上げの酒粕を入れ過ぎないことがコツです。